迎えた4時間耐久レース当日
僕、右肩脱臼
相方 手首にクラック
翌日の8耐の為に有名な外科の先生が
メディカルセンターに来ていると聞き
2人とも先生に出来る限りのテーピングを施してもらった。
「これで、4時間は、もつやろ
しかし・・二人とも満身創痍やなぁ~ガハハ!」とな。
テーピングのおかげで かなり楽になった。
本来スタートライダーは、相方のHだが
スタート直後は、手首に負担がかかるライディングが
予想される為、僕に変更。
先の見えない4時間後に向けてスタートが切られる
スタートは、クラッチスタートもル・マン式も嫌い
案の定、イマイチのスタートでした。
イマイチでも スタートできた
本来なら、この場所にいれなかったかもしれない亊を
考えれば 上出来。
一週間前に社長から電話があり
このレースは、出場を断念しようと言われた。
でも、僕は、食い下がった。
「NK4耐は、リタイヤ、そのうえ、SP4耐までリタイヤするなんて
出来ません!お願いです怪我は、大丈夫です!
必ず結果を出すので 出させて下さい!」
社長は、「わかった・・やれるんだな?」と言い
僕は、「はい!」と答えた。
序盤、ポールポジションだったZXR400と5、6台の
250cc勢がガチガチにバトルを展開してる。
トップ集団は、バトルを展開しながら
徐々に離れていく、でも焦っちゃいけない
タイヤに負担をかけず、一定のペースで走り続ける!
すると トップ争いに異変が起きた
スプーンコーナーで無理にインを刺そうとしたZXRが2台を
巻き込んで転倒。
その後、転倒などの自滅で トップ争いしていた半分以上が
消えていった。
400ccが最後まで生き残るには、最終スティントまで この
ペースで走れるタイヤマネージメント。
例え序盤が苦しくても、必ず後で生きてくる。
その判断が正しいかは、解らない
でも、今日 僕達が総合の表彰台に立つ日だと
決っているなら 間違ってない。
最初のスティントを終え、Hに交代する
Hは、口は、悪いがキレイな走りをする
愛称としては、あまり良くないと思う
多分、お互いが相手を認める事ができない
そんな仲。
ただ、コイツとなら 最後までタイヤを持たせれる
核心は、無いけど
そう思う亊に疑いは、全く無かった。
Hの怪我を考えると 無理は、せず
ポジションキープで上出来。
それでもHは、安定したラップを刻み
順位を上げていく。
2人共 何も言わないけど 我慢、とにかく最後まで我慢!
自分の仕事をきっちりとこなす。
中盤以降
総合 5位
クラス 1位
その順位で最後のスティントを迎える
ゴールライダーは、僕
ライダー交代の前にメカニックのKさんが
「自分に悔いの無いレースしてこい」と言ってくれた。
本来なら もう ズルズルな筈のタイヤは、まだ生きている
僕とHで大事にここまで 守ってきたタイヤには、
まだ勝負できる余力が残っている。
総合4位の250ccがそれほど離れていない亊は、知っていた。
そして、ヘアピン前の110Rを曲がった時 見えた
4位のTZR250R
あっという間に差を縮め 相手の走りを見る
完全にライダーは、タイヤの状態を把握しきれていない
タイヤの状態を無視して 無駄にペースを落とし過ぎてる。
それなら こっちのもの
僕らのタイヤは、全然イケてる、そして僕は、それに
見合ったペースで走れるから。
難なく、4位に浮上
前には、3台のTZR250R
残り時間を考えたら 追いつくのは、絶望的な距離。
それでも、最後の最後まで何が起こるかわからない
今までの自分達がそうだったように。
4位は、引き離した
後は、上位に何かあった時 ポジションアップ出来る
位置にいる事。
そして、残り時間が僅かになった時 それは、起こった。
激しいトップ争いを展開していたRGV-Γが
ヘアピンコーナー進入でまさかの転倒。
フロントからのスリップダウン
致命的なダメージを受けたRGV-Γは、そのまま脱落。
ひとつ順位が繰り上がって 総合3位に。
そして、最後まで集中力を切らさず走り切り
総合優勝とは、ならなかったものの
僕達レーシングチームハニービーは、
SP4時間耐久レースのドライ路面レースで唯一総合表彰台に立った
チームになった。
400ccクラス優勝は、嬉しいけど
僕達の欲しかったのは、総合の結果
決して100点満点では、なかったけど
最低限の仕事は、やり遂げる事ができたんじゃないかと思う。
実況解説していた八代さんが
ジリ貧するはずの400が最後追い上げて
総合の表彰台を得とくした亊を評価してくれていたのが
嬉しかった。
僕達のタイヤマネージメントとレースコントロールを評価してもらったと
いうより、見えないところの仕事をちゃんと見てくれてて
誉めてもらった気がしたんです。
少しは、社長に恩返し出来た気がした一日でした。
つづく