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2004年鈴鹿4時間耐久レース 12巻

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2004年の4耐は、

 

翌年、国際ライセンスに昇格

 

してしまう自分にとって

 

最後の4耐になりますから

 

特別なものでした。

 

ただ、気持ち的に

 

特別なだけであって

 

勝つ姿勢や、その為の

 

準備は、いつも通りです。

 

今回の相方は、

 

2001年4耐の相方だったT。

 

テスト開始前は、

 

チームの地元、関東のレースで

 

活躍をしていたTが主導権を

 

握っており、社長からも

 

「Tを中心に進めていけば必ず

 

勝てる」と言われていた。

 

僕がまず一番にやるべき事は、

 

社長の信頼と主導権を奪う事。

 

テストは、本番の

 

3週間前ぐらいがピークになります。

 

一週間、テスト漬け

 

ほぼ毎日走ります。

 

で、最初の難関は、

 

僕が正チェンジから逆チェンジに

 

するとこから。

 

Tは、逆チェン、僕は、正チェン。

 

今までは、

 

クイックで変更出来るシステムを

 

使用していたけど、トラブルの

 

要因にもなるし、ピット作業にも

 

少なからず影響が出るので

 

今回は、統一する事になった。

 

で、、Tは、「俺は、無理!」と

 

言い切るので、僕が折れる事に

 

なった。

 

徐々に逆チェンジに慣らしながら

 

タイヤテストをしつつ、車体のセットを

 

詰めていきます。

 

全く同じ仕様のマシンを2台用意し

 

お互いがお互いのマシンでセットを詰める。

 

そして、セットの違いをあぶり出し

 

ここから、本番用に擦り合わせていくの

 

だけど、このままだとエースである

 

T寄りの仕様にされてしまいます。

 

ただ、この時点では、2人共

 

タイムは、平凡なままで

 

予選の一発タイムも不安視されており

 

まだまだ仕様を決めるまでには、至らない。

 

タイヤは、

 

ブリヂストンのBT-001

 

ソフト(TYPE-4)

 

ミディアム(TYPE-3)

 

ハード(TYPE-2)の三種類がある。

 

予選は、上記の三種類から

 

各々が選んで使用する

 

真夏にソフトは、なく

 

ミディアムかハード。

 

僕は、摩擦係数が低く

 

前に進める固めのタイヤが好きなので

 

ハードタイヤの一択でしたが

 

フィーリングが いま一つ リンクしない。

 

そして、決勝用は、通常販売されていない

 

ブリヂストンが4耐用に造った

 

スーパーハードのTYPE-1

 

決勝を想定しつつ

 

TYPE-1を履いて ひたすら

 

周回をこなす。

 

目的は、好アベレージを刻みつつ

 

100ラップして

 

その過程のフィーリングを掴む事。

 

決勝を想定したアベレージは、

 

他チームを圧倒していた。

 

100ラップしたら、新品に交換して

 

更に100ラップに向けて走り出す。

 

このタイヤは、

 

100ラップしないとブリヂストンから

 

新しいタイヤを出してもらえない仕組み。

 

周回をこなしながら

 

僕は、思った。

 

「このタイヤ、スーパーハードの

 

の割に感触は、ミディアとハードの

 

間に近いな・・・」

 

「このタイヤを予選で使ってみたい・・」

 

そう思わずにいられなかった。

 

その日のテストを終え

 

チームスタッフと共に

 

サーキット内にあるブリヂストンサービスに行き

 

サービスチーフに

 

「TYPE-1を予選で使わせてほしい、

 

そして、それに向けてテストする為の

 

タイヤを供給してほしい!」と嘆願した。

 

これは、走った僕にしか、

 

そう感じた僕にしか

 

解らず、Tもスタッフも押せない

 

話だった。

 

その話を聞いたチーフのSさんは、

 

笑い出し

 

「いや、いや、無理だろ

 

TYPE-1は、4時間を一本のタイヤで

 

走る為に造られたタイヤだよ?

 

一発タイム出すなんて、無理だから。

 

いくら、路面温度が高くても

 

硬すぎて 使い物にならないから」

 

確かに、そうかも

 

しれないが、僕は、イケると

 

思った、机上の理論より、

 

前例がなくても

 

実際履いて、走った僕には、

 

解る!、Tを含めたTYPE-1を

 

履いた他のライダーは、

 

使用用途を頭に刷り込まれているだけ、

 

だって、無理だよ

 

タイヤから訴えてきてるんだから

 

「僕は、スプリントでも使える」と。

 

僕は、必死にSさんに

 

「一回だけ!一回だけ試させてほしい!

 

駄目だったら素直に諦めます」と

 

頼み込み

 

なんとか、その為のタイヤを

 

用意してもらえる事になった。

 

そして翌日

 

新品のTYPE-1を履き、

 

スプリントテストでコースイン。

 

ピットロードを走るだけでも

 

笑みがこぼれる・・・・

 

もう既に履いた事のあるタイヤでも

 

付き合う意識が変わると

 

こんなにも心が逸るものなのか・・・

 

昨日まで友達だった子が

 

今日から恋人になった、

 

そんな感じを楽しみつつ

 

3周目には、コースレコードを

 

連発する快走・・・・

 

僕は、間違ってなかった

 

いや、間違うはずがない

 

タイヤが自信をもって僕に

 

話しかけてきたのだから。

 

同じくTYPE-1でスプリントテストをした

 

Tは、大きくタイムを伸ばせずにいた。

 

この件は、スタッフから社長に伝わり

 

晴れて僕は、このレースの

 

チーム内主導権を奪取する事に

 

成功した。

 

この件は、チーム内だけに

 

留まらず、ダンロップタイヤを使用していた

 

ライバルチームにも伝わり

 

そのチームは、タイヤをダンロップから

 

ブリヂストンへスイッチした。

 

本来なら ありえない話だが

 

一台でも勝てるチームを増やしたい

 

ホンダ朝霞研究所スタッフの

 

働きかけがあったと

 

数年後、そのチームのライダーから聞いた。

 

そして、その後から

 

TYPE-1は、全日本ST600クラス

 

ブリヂストンユーザーの

 

スタンダードタイヤになったのです。

 

そう、これを機に

 

TYPE-1は、4耐用タイヤと

 

全日本ST600スプリントタイヤとして

 

一本二役で

 

絶大な支持を得たのです。

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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