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日本むかしばなし 19巻

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1997年鈴鹿選手権SP400クラス 第3戦

 

鈴鹿サーキットフルコース

 

東コースに比べ長いストレートが一本追加され

 

おまけに西コースはハイスピードコーナーで構成されているので

 

マシンのハンデが出やすい

 

しかし ハンデをカバーできるのもフルコース

 

矛盾しているが

 

東と西を繋ぐコーナーがキモで

 

前半だとダンロップコーナー

 

後半だとシケインがマシンハンデの差を埋めてくれ

 

更にテクニック次第ではパッシングも可能

 

ダンロップコーナーは400ccで

 

5速全開フルバンク状態でアウトから被せたり

 

シケインは目測無視 ゲートまで突っ込んで

 

後は全身全霊で止めるしかない

 

あるいは 相手がブレーキかけるまで

 

こちらもかけない・・・とかね。

 

当然だけど やはりフルコースで速い奴が

 

目立つし かっこいい

 

東コースと西コースはやはり 半分だけ、という取られ方。

 

GPや8耐が行われる鈴鹿サーキットフルコースで速い

 

それがステータスとなるのも当然。

 

とは言え ストレートの遅いCBRだと

 

かなり 厳しい戦いが予想されるが考えても仕方ない。

 

その決勝レースは10周

 

フロントローから上手くスタートを決めホールショットで1コーナーへ、

 

2コーナー、S字、逆バンク、ダンロップコーナー

 

デグナー1個目をトップのままクリア

 

デグナー2個目を立ち上がると

 

次の110Rまでに短いストレートがある

 

そこで 後ろをちらりと見ると

 

真後ろにF君 その後ろに4台ほどのカワサキ

 

僕を含め数珠繋ぎでトップグループを形成。

 

「これは 逃げれないな・・・」と、

 

とりあえず一周して周りの出方を確認しないと

 

見通しがたたない。

 

バックストレートで一台のカワサキにパスされる

 

130R、シケイン、最終コーナーを立ち上がると

 

あっという間にストレートで

 

3台のカワサキが弾丸のように抜いていった。

 

「おいおい まだストレートの前半だぞ」

 

「ほんとに同じ400かよ・・」

 

僕と同様 後ろのF君もあっという間に抜かれたんだろう、

 

前にカワサキ4台 これを何とかしないといけない

 

1コーナーまでは そのパワー差で距離は開くが

 

S字、逆バンク、ダンロップコーナーで

 

全員を抜き去る

 

が、やはりバックストレートで1台

 

メインストレートで3台抜かれる

 

そして それをまた東コース区間で全員抜き去る

 

その繰り返しが続く

 

そして迎えた最終ラップ

 

メインストレートで思ったのがこうだ

 

この4台をコーナー一個でも早く抜き去る

 

後はバックストレートまで持てる力を出し切ってペースを上げ

 

パワー差を埋めるほどのギャップを作る

 

今までの周と同じくバックストレートで抜かれたら僕の負け

 

抜かれなかったら僕の勝ちだ

 

シケインの突っ込みには自信があった

 

僕はシケインだけリアブレーキを使うので

 

他のライダーより深く突っ込み しっかり止まる

 

その絶対的自身があったから。

 

いつものように東コース区間で次から次へとパスするが

 

最後の一台を抜くのにダンロップコーナーまで

 

引っ張ってしまった

 

出来れば逆バンクで抜いておきたかったが

 

これが凶とでるか吉とでるか・・・

 

しかし 僕はこの時点で大きな失態を犯していたが

 

この時はカワサキの処理ばかりに気が取られて

 

そこまで神経を配れなかったのも仕方ないのかもしれない。

 

最後のカワサキを抜き去ったあと

 

ダンロップコーナー出口から鞭を入れる

 

1mでも2mでも後ろを引き離したい

 

後ろを見る事すらせず

 

無我夢中でスプーンカーブを立ち上がり

 

運命のバックストレートへ。

 

めー一杯伏せスクリーンの中に身をしまい込む

 

全開でストレートをかけ上がりながら

 

ひたすら「来るな・・来るな・・」と祈った

 

そして130Rが近づいてきたとき

 

「よし来ない 勝った!」そう確信した

 

130Rをクリアし残るはシケインのみ

 

その時 一瞬迷った

 

保険をかけて イン側を閉めて進入するか

 

それとも 自分のブレーキングを信じて

 

レコードラインで進入するか・・・

 

イン側を閉めた場合 当然シケインの進入が苦しくなり

 

その分進入スピードの低下は否めない

 

最悪 アウトから速度を乗せて被せられたら負ける可能性も。

 

しかし 如何にブレーキングに自信があっても

 

玉砕覚悟でイン側に突っ込んで来られたら それも負け。

 

結果 イン側に1台分開けた状態で

 

出来るだけシケインの進入スピードを重視しつつ

 

イン側ブロックの両方を兼ね備えた方法で行くことに、

 

イン側1台分開けていても

 

そのスペースに中々入って来る事は

 

通常 視覚的に無理と判断されるからだ。

 

 

後ろの状態なんて全く解らないから

 

自分の判断が正しいのか誤りなのかは

 

ゴールラインをくぐるまで わからない。

 

自分を信じブレーキングを開始!

 

ほんの少し安全を意識して

 

突っ込みが甘かったのかもしれない

 

ブレーキングを終えようとした その刹那

 

僕が残した一台分のスペースから一台のバイクが

 

激しいブレーキングと共に現れた

 

なんと それはF君

 

「このスペースに普通入ってくるかー!」

 

そう 僕は完全に彼の存在を忘れていた

 

このレース オープニングラップ以外 一切後ろを見なかったことが

 

仇となり

 

自分の意識は完全にカワサキだけに向いてしまっていた。

 

そうF君は僕同様 抜かれては抜くを繰り返し

 

そのポジションをキープしながら

 

最終ラップ 僕のスパートに気付き

 

 一緒にそのカワサキ包囲網から抜けてきた

 

当然 バックストレートで一度はカワサキにかわされたかもしれない

 

だけど 生粋のファイターであるF君なら

 

130Rで抜き返す事も充分可能だろう

 

そして 後ろの状態を把握できていない僕の

 

首を狩るところまで 着実に近づき

 

今 正にその刃は僕の首根っこを完全に捉え

 

後は思いっきり力を込めて押し込むだけになった。

 

万事休す

 

一瞬 「負けた 無理だ・・」と思ったが

 

インを刺したとはいえ 内側一杯から

 

シケイン一個目にアプローチをしかけるF君のラインは

 

これ以上ないほど苦しいものとなる

 

それに比べ 一台分外から進入する僕は

 

レコードライン程とはならないが

 

F君より はるかにスピードを乗せて進入が出来る

 

シケインに飛び込んだのはF君が先だが

 

そのタイトなラインに確実にスピードは殺されている

 

僕は外からF君に並びかけ

 

僅かながら ほんの一瞬早く シケイン2個目に対し

 

僕が内に入った

 

しかし 切り返したのは両者 ほぼ同時

 

その瞬間 2台は接触 

 

外にいたF君を右斜め前に押し出す形になり

 

「しまった!前にいかれた」

 

そう 接触だろうが 何であろうが

 

今 正にF君は僕より前にいる

 

このまま 彼がアクセル全開で最終コーナーを下っていけば

 

今度こそ勝負は決まる

 

しかし 何ということだろう

 

F君は確かに僕より前にいたが

 

その場はグラベル

 

最終コーナーに向けてアクセルを開けるF君、

 

しかし RVFのリアホイールは砂の中で虚しく

 

左右に振れならがスピンするだけ。

 

その姿を見て まだ首の皮一枚繋がっている、まだ終わってない

 

シケインを立ち上がり マシンを切り返した瞬間 

 

今度は外側にライムグリーンのマシンが突如現れた

 

どうやら 僕とF君が争い接触している間に

 

後ろのカワサキが その距離を詰め

 

隙を狙って 僕をかわそうとしていたらしい。

 

しかし 僕が切り返しアクセルを全開にした瞬間と

 

カワサキがアウトから抜きにかかろうとした瞬間が同時で

 

カワサキが僕の目に入った時には

 

接触を回避できず 外にいたカワサキを

 

はじき飛ばしてしまう形となった

 

そのまま 無我夢中に全開で最終コーナーを立ち上がり

 

トップでゴール

 

最後の最後まで気の抜けない壮絶なレースを制する事ができた。

 

2位は接触したカワサキ

 

F君は3位でゴール

 

クールダウンラップでF君とはお互いの健闘を称え合った

 

カワサキのライダーはちょっと怒っている様子だ

 

前戦は辛いレースだったが

 

力を出し切り 壮絶なバトルを制し優勝した このレースは

 

最高のものとなった

 

これでシリーズランキングもポイントトップ

 

歓喜の表彰台を終え

 

パドックで友人が感動して泣いてしまったと言ってくれた

 

自分のレースで誰かが感動してくれるなんて

 

想いもしなかったけど

 

今日はそんなレースが出来たんだと

 

素直に嬉しかったし

 

何度も切れそうになった勝利の糸を

 

手繰り寄せた自分は

 

ほんの少しレーサーとして強くなれた気がしたんだ。

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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